flowers　奥山由之　写真集

写真家奥山由之の作品集。作者が長年撮りつづけたこのシリーズは、亡き祖母が暮らしていた家で撮影されました。
この場所をいま自身のアトリエとする作者は、射し込む光に、庭に揺れる草木に、生前の祖母を偲び、多くはなかった会話をあらためて紡ぐように、花を撮り重ねてきました。

80年代に祖父が使用していた110フィルム（ワンテンフィルム）という小さなフィルムを用いて撮影された花々は、部屋のクラシックな意匠やカーテンとも合わさり、花と向き合う自由な視点や角度に引き付けられます。
中でも、窓という絵画的なモチーフを用いて、外部の流動感や瑞々しさと内部のほの暗さを印象づけ、内から外への眼差しや、光の中で花に近づく揺らぎある視点において、祖母と自身とを重ね合わせています。窓に映り込む花と、ここにある花。
窓を挟む室内の花と、庭の花。花を撮ることによって無数の対話が交わされます。

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奥山由之さんが長年撮りつづけたこのシリーズは、亡き祖母が暮らしていた家で撮影されました。この場所をいま自身のアトリエとする奥山は、射し込む光に、庭に揺れる草木に、生前の祖母を偲び、多くはなかった会話をあらためて紡ぐように、花を撮り重ねました。
80年代に祖父が使用していた110フィルムという小さなフィルムを用いて撮影された花々は、部屋の意匠やカーテンとも合わさり、花と向き合う自由な視点や角度に引き付けられます。 窓という絵画的なモチーフを用いて、祖母と自身とを重ね合わせ無数の対話が交わされています。 一冊のなかに融け合う、古い家族アルバム、祖母と共にあった家や家具、そして今を咲く花という時間軸のグラデーションは、「flowers」の奥行き、眼差しや感覚の混交に、幅のある時間・歴史が息づいています。
フラワークリエイター篠崎恵美（edenworks）さんにより提供された、棄てられてしまうはずだった花々ですが、時折登場する花瓶を持つ手、花を差し出す手 ─ 自身であり他者であるだろうその手は、それぞれの記憶に触れるものになっています。